うどんが一番美味しいのは、なんと言っても出来立て。つまり 茹で上がった直後。
最近、人気が急上昇した「ぶっかけうどん」メニューは、まさに茹直後のうどんを味わうプリミティブかつ”通”な食べ方でしょう。
つまり、生きているうどんを食べるということ。
では、なぜ茹で上がり直後が美味しいの?
うどんの美味しさの素は、小麦の「たんぱく質」と「澱粉」から作られます。
茹で上がりのうどんの旨さの秘密は、まず風船のように膨らんだ澱粉粒のモチモチとした弾力。この食感を、私たち日本人は大好きなのです。
小麦粉中の澱粉粒は、92〜93℃の温度で約5.5倍に膨らみます。この膨らんだ澱粉粒を素早く、食する。あるいは、キュッと冷やして直ぐに食する。
この粘り感、もちもち感、そして澱粉のかすかな旨み。
これに加えて、美味しさの秘密はもうひとつ。
麺の骨格は、たんぱく質の中のグルテニン、グリアジンという2つから成るグルテンという粘土状の物質によってできています。
讃岐のうどん製法は、このグルテンをいかに上手く鍛えるか…これが”真髄の技”。
小麦粉に塩水を加え、団子を踏み座布団状にし、更に揉み込む。そして寝かし、頃合いをみて繰り返す。
最初は、柔らかくなすがままだった団子が、やがて……なんと序々に押し返してくるようになるこの不思議。
団子(小麦粉生地)も生きている!!!!ということです。
あまり、押す力を強く続けすぎても団子はへたって弱ってしまう。
頃合いをみながら、時間をかけて少しづつ 団子の中に存在する不思議な力を引き出すように、鍛えていきます。
やがて、肌はツルツル、指で団子を押せば、その指跡が元に戻る弾力が生まれます。
昔の讃岐の手打人は、「フ(麩)がデケテ(出来て)きた」といってこの弾力感覚をとても大事にしました。
このしなやかな弾力が、澱粉のもちもち感と、合い重なった時……。
この瞬間が、「うどんの美味しさ」の至福の瞬間です。
柔らかすぎず、硬すぎず。
柔らかそうでいて、しかし押し返してくる微妙な弾力。
すぐに噛み切れるほど柔らかくないけれど、プツッとした硬さでもない。
そして、絹のようななめらかさ。
噛むごとに現れ始める、かすかに舌に乗る微妙な旨み。
これが、”讃岐うどん”の<旨さの真髄>だと考えています。
まず、人間が通常食物を食べる際に、噛まずに飲み込むことはまず、考えられません。これは表現の問題であって、いかに讃岐の人でもうどんをのどで味わうということはありませんね。
ただ、ちょっと思い当たることはあります。以前、京都の友人をうどん屋さんに連れて行った時、隣のテーブルに座った人のうどんを食べる速さに、友人は「呆然、唖然....」としていたことがあります。
とにかく、食べるのが速い。丼に山盛りのうどんをあっという間に食べてしまう。その速さに、殆ど噛まずに飲み込んでいると思っても仕方がないことかもしれません。
讃岐の人は、うどんを2〜3本口に入れてゆっくり噛んで味わうという食べ方ではなく、一挙に口に入れてその滑らかさと弾力(粘弾性)を味わうわけです。具体的にいうと、感覚器官としては歯根膜(噛んだ時の歯根膜の歪が圧感覚として「歯ごたえ」「歯ざわり」といった食感となる)で食感を、舌で滑らかさを感じているわけです。
といういことで、答えは....「のど越しを味わうというより、讃岐の人のうどんの食べ方に特徴があって、多くの麺を口に頬張り、素早く噛んでその食感(滑らかさと弾力)を一気に楽しむ傾向がある」ということでしょうか。